水族館
「タコがいましたのよ」「・・・おぉ、タコですか!」
Tさんが言うと、ただのタコが、シーラカンスのような稀少生物に思えてくるから不思議だ。
僕達は水族館に来ていた。昨日のアテネ行きが欠航となり、島から出られなくなったのである(=前出)。一晩明けても状況は変わらず、いわば時間つぶしに散歩に出、水族館には気まぐれで入場したのだった。
水族館といっても、家庭にあるような水槽が4〜5ばかり、生臭いだけの貧弱な標本には辟易しそうなものだ。しかし、今回の旅で知り合ったTさんがいると、なぜか楽しかった。
Tさんは、都内、とあるお屋敷にお住まいの、若尾文子さんと中村玉緒さんをミックスしたような奥方であった。それでいて高慢なところは微塵も無く、鷹揚な人柄が場を和ませる・・・(妻が今も なお「◯◯の貴婦人」とよぶ)Tさんは、微笑みながら水槽のタコに見入っていた。
Tさんが言うと、ただのタコが、シーラカンスのような稀少生物に思えてくるから不思議だ。
僕達は水族館に来ていた。昨日のアテネ行きが欠航となり、島から出られなくなったのである(=前出)。一晩明けても状況は変わらず、いわば時間つぶしに散歩に出、水族館には気まぐれで入場したのだった。
水族館といっても、家庭にあるような水槽が4〜5ばかり、生臭いだけの貧弱な標本には辟易しそうなものだ。しかし、今回の旅で知り合ったTさんがいると、なぜか楽しかった。
Tさんは、都内、とあるお屋敷にお住まいの、若尾文子さんと中村玉緒さんをミックスしたような奥方であった。それでいて高慢なところは微塵も無く、鷹揚な人柄が場を和ませる・・・(妻が今も なお「◯◯の貴婦人」とよぶ)Tさんは、微笑みながら水槽のタコに見入っていた。