カウントダウン

☆青さんの旧東西パキスタンレポート1☆

 そもそも、日食を観に行こう、そう自分の中で盛り上がったのは今年の4月の事だった。ところが、今年は育ての親とも言うべき祖父の初盆・・・仕事ならともかく、旅して出席しない訳にはいかない。そこで、国際空港があって皆既帯に位置するカラチが候補となったのであった。

 バングラディシュのダッカ、そしてパキスタンに入ってぺシャワールを駆け足で巡り、カラチ入りしたのは8月10日。この日食前日に日食観測場所の下見をしようと思っていたのだが、宿を取ってふと考えた。

“ここの屋上で観れないだろうか?”

屋上に出られないか、試しに階段を昇ってみるが途中で階段は閉ざされている。仕方なく、レセプションで「日食がとにかく観たい、明日屋上に昇らせて」とカタコトで頼む私。レセプションの男は、更に上役(?)のじいさんに「この日本人、日食が観たいんだってさ、どうする?」といったことを聞いている(英語ですらなかったが、わかるもんだ)。苦笑いを浮かべながら、じいさんは「雲が出るよ」と言って、それでも許可をくれた。

 いよいよ8月11日当日。

 午前中とてもいい天気だったにも関わらず、午後になるとじいさんの言った通り、空に雲が広がり出す。当地の日食は16時頃(日本時間20時)スタート。レセプションに行って、屋上のことを切り出すと、ホテルの兄ちゃんとガードマンのような銃を肩からかけたおっちゃんが、一緒に屋上についてきてくれる。屋上に出てみると「あ!欠けてる!!」兄ちゃんにはわからないであろう日本語で叫ぶ私。カラチは雲が多いおかげで、雲がフィルターになって肉眼でしっかり欠け始めた太陽の姿が観られたのだ。そして、とうとう太陽にすっぽりと月の影が重なる。思わず「ひゅー」とも「ひゃー」ともつかない声が漏れてしまったが、同時に下界でも人々の「ほお」とでも言うべき声が上がっている。そして、薄暗くなった世界に光るネオンと家々の窓からの明かり。
その時の空は、薄闇とも夕暮れとも異なる、紫めいた明るさをも含んだ暗さで、声を上げた直後、私の背後にたたずむ兄ちゃんの方を振り向いても、しっかり兄ちゃんの表情は読み取れる。そして、ダイヤモンドリング。刻みで変化していく太陽の姿から一瞬たりとも眼が離せない。

 結局、皆既が終わったその5分後、太陽は厚い雲に覆われてしまった。ずっと私に付き合ってくれた兄ちゃんに礼を言って、私は階下に戻り、今回の旅の目的は果たされたのであった。

皆既日食:17時28分(日本時間21時28分) 食分0.998「お星様とコンピュータ」より

Reported by 青さん

戻る << 
 >> 青さんレポート2(皆既日食の写真)