フェルディナンド1世の2番目の妃として嫁したのは40代後半のこと。それから10年、突然の病に倒れるまで、エレオノーラ妃は献身的に公務にあたったそうである。このボヤナ教会も妃に救われている。「古くて汚れた画ばかりだし」と取り壊し寸前だったという。そこに妃が異をとなえ、教会の保護と修復を提案した。教養があり信心深かった妃はボヤナ教会の価値を理解していたのだ。僕たちが、美術史上きわめて重要な壁画を目にできるのも、妃の尽力ゆえ。妃は最期に「ボヤナ教会に埋葬を」と望んで亡くなったそうである。同じ時代の王族、例えばロシアのアレクサンドラ皇后にくらべて、名を知る人は少ないであろうエレオノーラ妃。とても立派な女性だったと思う。

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